ワールドカップの名勝負

オランダ対ブラジル
1974年ワールドカップ
西ドイツ大会

　西ドイツ大会の準決勝オランダ対ブラジルは、未だに語り継がれる一戦となっている。
　当時のブラジルはキング・ペレが代表を引退し、代表の中心選手は10番でドリブルとフリーキックの名手ロベルト・リベリーノ、メキシコ大会で、全試合得点を記録したジャイルジーニョ。本来なら、センターフォワードにトスタンが居るはずだったが、彼は、怪我によって、引退を余儀なくされていた。
　対して、オランダには、サッカーの革命児ヨハン・クライフ、無尽蔵のスタミナで中盤を支配したもう1人のヨハン、ヨハン・ニースケンス、左サイドを駆け上がるドリブラー、ロブ・レンセンブリンク、守備の要、ルート・クロル、彼らが中心となり、鬼才リヌス・ミケルスが編み出したトータルフットボールを完璧にこなしたのが、機械仕掛けのオレンジ軍団だった。
　試合は、西ドイツ大会の最高の名勝負となった。
　ブラジルは、リベリーノを中心に試合を組み立てようとするが、オランダは、トータルフットボールの代名詞、全員攻撃、全員守備の戦術、激しいプレッシングで、オランダはブラジルにチャンスを与えなかった。対して、ブラジルもオランダの攻撃を守り続け、前半はスコアレスのまま終わる。
　後半に入って、直ぐに試合は動く、後半5分、ヨハン・クライフのクロスがブラジルのＤＦに当たり、コースが変わったところに、ヨハン・ニースケンスが足に当てる。浮き上がったボールは、ブラジルＧＫレオンの指先を越えて、ブラジルのゴールで吸い込まれ、オランダが先制する。
　オランダは、先制点から、自信をみなぎらせ、試合の主導権を握る。対して、ブラジルの攻撃陣は、オランダＤＦのオフサイドトラップにかかり、効率的な攻撃が出来ない。そして、後半25分、左サイドを駆け上がったロブ・レンセンブリンクの頭脳的なクロスに、ヨハン・クライフがジャンピングボレーを決める。このゴールは、伝説的なゴールとなり、クライフのニックネーム「フライングダッチメン（空飛ぶオランダ人）」の由来となった。
　その後のブラジルの攻撃をオランダは凌ぎきり、2−0で試合終了した。
　ブラジルにとって、このオランダの敗戦は、ショッキングな物となり、その後、1994年まで、Ｗ杯優勝はおろか、決勝にまで進むことが出来なかった。

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