サー・ボビー・チャールトン
(Sir Bobby Charlton)　
1937年10月11日生まれ

　イングランド史上最も偉大なサッカー選手の1人、母は、ニューカッスルの伝説的選手、ジャッキー・ミルバーンの兄弟、言ってみれば、ボビーはミルバーンの甥に当たる。しかし、彼にサッカーの手ほどきをしたのは、おじではなく、母と言うのは有名な逸話である。

　1954年に17歳でマンチェスター・ユナイテッドと契約をすると、当初は控えが多かったが、1956年に19歳でレギュラーに定着、中心選手となり、56−57シーズンにはリーグ制覇を果たす。マッド・バスビーに率いられたマンチェスター・ユナイテッドは、ここから、黄金時代を迎えるはずだった。しかし、運命は残酷だった。1958年2月6日チャンピオンズカップ準々決勝、レッドスター・ベオグラード戦の帰途、彼らは「ミュンヘンの悲劇」と呼ばれる飛行機事故に遭遇、マンチェスター・ユナイテッドの名選手、ダンカン・エドワーズを初め、多くの選手が帰らぬ人となってしまう。幸運にも大きな怪我の無かったボビーだったが、事故のショックは大きく、その年のスウェーデンワールドカップに帯同するも、サッカーのできるような精神状態では無かった。

　しかし、不屈の闘志で、マンチェスター・ユナイテッドの再建に尽力する。1960年代には、ジョージ・ベスト、デニス・ロー等と共に一時代を築き上げ、1963年にはFAカップ、1965年、1967年にはリーグ制覇、個人でも、1966年の自国開催のワールドカップ制覇に貢献し、バロンドールを獲得。そして、彼にとってのサッカー人生のクライマックスと言える、1958年の「ミュンヘンの悲劇」から10年にあたる1968年チャンピオンズカップ決勝でベンフィカを下し、悲願の、そしてイングランドのチームとして初めての欧州タイトルを手にした。

　テクニックとパワーを兼ね備えた選手であり、特に左足から放たれる強烈なシュートは『キャノンシュート』と呼ばれた。またキャプテンとして冷静沈着なプレーぶりは模範的なものだったが、私生活でも常によき夫、よき2人の娘の父であり続けた。ボビーが冷淡な人間だというわけではなく、死線を生き抜いてきた男だからこその人間性だった。

　1966年イングランドワールドカップ決勝のドイツ戦では、後に皇帝と称されるフランツ・ベッケンバウアーのマンマークを受け、ベッケンバウアーが偉大な選手となることを予感している。

　代表試合成績は106試合で、49得点をあげ、イングランド代表記録になっている。。

　チャンピオンズカップの決勝に勝ち、10年越しの忘れ物を取り返したその日、祝勝会をボビーは欠席し、自室で一人涙にくれながら妻のノーマにこう言ったという：「関係のないメディアの連中と馬鹿騒ぎをするのには耐えられないんだ。この勝利は僕たち（ミュンヘンの悲劇に遭った人たち全員を含む）の物だ。」と語ったという。

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